これは、私の本当にお恥ずかしい話です。
30歳くらいまで、「商売」の基本がまったくわかっていませんでした。というか、世の中のしくみがわかっていない。
デザインを担当する専門職として就職した私は、愛知県の工場の中で「作る」ということにかなり特化した社会人だったと思います。逆に言えば「作る」以外は何も知りませんでした。
それが、東京転勤とともに小さいながらも部署をまかされることになります。
営業とクライアント先に同行して打ち合わせしたり、部署の収支を管理したり。
デザイン以外の仕事は正直つらかったのですが、この経験は後にとても役立つものになりました。
営業マンに教わった「商売」というもの
「商売」、英語で言うと「ビジネス」。
「商売」をもっとも簡単に説明するとしたら…。あなたならどうしますか?
私はこう言います。
「仕入れて、売る」たったこれだけです。
なあんだ、そんなことかと思うでしょう?
商売の極意やノウハウは、本屋さんに行けば山のように関連書籍があります。
古くは近江商人の「三方よし」ですか(自分良し、相手良し、世間良しの三方を満足させることを良しとするビジネスの教え)。
それよりも前の段階にある、基本中の基本を知りませんでした。
デザインは目に見える仕入れがないので、余計に「なんだそれ?」だったのかもしれません。
転勤していっしょに動いていた営業マンが見かねて、私にいろはの「い」を教えてくれました。
「なんでもそうだけど、商売って物を仕入れて売るんだよ。その差額が利益なんだ」
目からウロコでした。そう言われれば…
・ラーメン屋→製麺所から麺を仕入れてラーメンを作り、お客に売る。
・製麺所→問屋から小麦粉を仕入れて麺を作り、ラーメン屋に売る。
・農家→種苗業者から種を仕入れて麦を育て、小麦粉にして問屋に売る。
と、すべてこの「仕入れて売る」の例に漏れません。
自動車も、洋服も、印刷物も全部同じですね。仕入れがないのは漁師くらいですか。
これがわかると仕事がやりやすくなった
そんなビジネスの超基本が分かっただけで、私の本業であるデザインもやりやすくなりました。一見仕入れがないように見えても、イラストや写真を買ってデザインを作り売っています(厳密にはこれは仕入れではありませんが)。
どう運営したら採算が合うのか? いただけるデザイン料と支出(固定費、光熱費、雑費)を見比べることで自分のあるべき姿がクリアになってきます。
「利益を増やすには、コストを下げるか、売価を上げるしかない」これも、そこから学んだ真理です。
また、お客様の商売についても要点がつかみやすくなり、販促やブランドのご提案がしやすくなったと思います。
当たり前のことがわかるってすごく大事なのですね。
デザインも商売です
よく「デザインは感性だ」と言われたりしますが、実は90%くらい理屈で考えています。あれから20年以上経ちますが、デザイン関連以上にビジネス書も読むようになりました。それなりに知識はつきましたが、それでも「仕入れて売る」の基本に立ち返ることがあります。夢のある仕事であると同時に、デザインも「商売」なのです。
よかったら、あわせてどうそ。