デザイナー羊男の毎日

日常の「気づき」のおはなし。ごゆっくりどうぞ。

「ミナを着て旅に出よう」皆川明の本を読んで思ったこと

 

これは自分で買った本ではありません。

娘が「フィンランド展」で購入してきたものです。娘は私の影響を受けたのか本好きになりました。今では時々娘の買ってきた本を拝借しています。本好きの相乗効果が生まれたというワケですね。

そして皆川明といえば、好きな人にはたまらないファッションデザイナー。

彼の特徴はいろいろありますが、私にはそのモチーフの素晴らしさだと感じられます。

 

懐かしく、新しい

彼のつくる服は女性ものが圧倒的に多いことから「フェミニン」な印象を持たれている方も多いと思います。確かに可愛らしいし、女性的なやさしさに満ちているようなデザインに見えます。「詩を読んでいるような」または「洋服が歌っているような」独特のデザイン。そしてどこか懐かしいと感じます。そのなつかしさは既視感や昔の記憶から派生したものではなく、心の引き出しを揺さぶられたような不思議な感覚なのです。

私自身、ちょうちょや花などに特別の思いがあるわけではないのに、琴線に触れるような。これはある意味新しい感覚なのかもしれません。

 

オリジナルの持つ強さ

私はグラフィックデザイナーという職業で、皆川氏はアパレルデザイナー。

仕事のしかたは構造的にまるで違います。

グラフィックデザインは「課題解決」が基本となります。ある目的に向かって様々な材料を取りまとめて。デザインというツールを使って解決していく。

一方アパレルデザインは、オリジナルの表現でファンを増やします。もちろんアパレルでも編集的な仕事のしかたもありますが、ミナ(皆川氏のブランド)はオリジナル重視の傾向が強い。それは表層的なものだけでなく、ビジネスの仕方にも表れています。

 

みんなが幸せになる服作り

洋服の販売は半年ごとにバーゲンセールを行い、在庫を整理するやり方になっていますね。デザイナーはどんどん新しいデザインを起こさなくてはならず、それも半年で価値が半減していきます。また、コスト重視の大量販売・大量消費の量販店との闘いも意識しなければならない。でも、これがはたして幸せなことなのか?と。

安くものを作るということは、誰かが無理をしているということです。人は「使う」と同時に「作る」の側にも社会的に組み込まれているはずなんです。

デザイナーは価値を認められず、消費者も「本当にいいもの」を手に入れることができない世の中。そこに皆川氏は危機感を感じて、自分のブランその方向性を決めています。昨今の「持続可能な」というお題目をリアルに体現している方だと感じました。

 

方向性は違えど

新年早々、とても勉強になりました。違う畑の人の本を読むことは何かしら得るものがあります。仕事のやりかたは違いますが、そこから学んで自分の分野に活かすことはできます。いや、違う畑だからこそそういうことがしやすいのだと。

あこがれと、畏敬の念。それも自分のデザインを確立する大事な要素なんです。