気持ちのいい矛盾…。
そんなものがあるのかい?
いやいや、そんなものだらけですよ。
「何かを磨く」って言いますよね。これ、表面をピカピカにするようなときに使う言葉なんです。あたかも表面の傷とか凸凹をとっているようだけれど、実は細かい傷をたくさん付けているんですよね。それでピカピカにしているという。
それに気づいたときに「ああ、気持ちいい」と思いました。
なんだか人生みたいじゃないですか?
すごくいい人になろうと思ったら、取り繕うだけじゃダメなんだよなあ。
やっぱり、小さな傷をたくさん負わないと光り輝くことはできないんです。
でもね。その傷をわざわざ顕微鏡で人に見せる必要もなくてさ。
「ああ、あの人は輝いているねえ」とだけ思わせておくのが粋ってものですよね。
苦労が見えちゃうと、いぶし銀になっちゃうじゃないですか。私が欲しいのは、あくまでも純粋に見えるピカピカなんです。
私が生業にしてるデザインだってそうだよな。
一瞬見てもらうために、すっごく時間をかけて手間をかけてさ。
それでも一瞬気持ちがよくなってくれたなら満足なんですよ、私。
すべてが公平に、天秤ではかったようになんかならない。
これだけ努力したんだから、これだけの見返りが欲しいとか、評価が欲しいとか。
だいたい評価ってなんなんだろう。「幸せはいつも自分の心が決める」って誰かさんも言ってたっけ。
人に何かを教えるってことについても、何かをほどこしたような顔をしていませんか?
本当は教えることで、自分の理解が深まっていることもあるんですよね。
「ありがとう」と言ってもらった人が幸せを感じるんじゃなくて、本当は言ったほうが感じてるはずなんです。
そんな、そんな、気持ちいい矛盾。たくさん見つけていきたいなと思っています。