もう日本の音楽シーンにとって「突然変異」としか言いようがないです。
そしてこの変異が音楽シーンを変えてしまったと言っても過言ではありません。
そのくらい、画期的な音楽とアートのユニット(と言ったほうが正確だ)だと思います。
「電子レンジの発明は宇宙人の仕業」ということがまことしやかに語られますが、無理もないですよね。少しづつの進化ではなく、いきなり完成品が現れたんだもの。
そのくらいのインパクトがあるのです、YMOには。すごく変な例えですが、まったく体験したことがないものが、すごい完成度で現れるというのは他にあんまり例が見つからないのです。それは音楽だけではなくて、デザインにも言えます。
当初、リーダーの細野晴臣氏は横尾忠則をメンバーに迎え入れる計画があったといいますが、いや横尾さんでなくてよかった。個人的にあんまり好みじゃないので。
結果的にすごくクールで垢ぬけたグラフィックや映像が、まぶしいくらいに展開されました。これは高橋幸宏氏のファッションセンスも大きく寄与しているのでしょう。
肉体訓練からの解放
私の音楽に対する嗜好もYMOにかなり影響を受けています。
YMO以前の音楽といえば、「訓練と経験則」と言っても差し支えないと思います。まず楽器というある意味不完全な道具を使いこなさないと話にならない。そして、たくさんの経験を積んで音のうねり(グルーヴ)の引き出しを用意しなくてはならない。
細野氏はそこから脱却したかった旨のことをインタビューで答えていました。
まあ、逆説的に「音楽の大変さ」を知っていたからこういう発想になったのかもしれませんが。
YMOのインパクト
結果的に、まだシンセサイザーが出たての頃だからむしろ肉体的な負担は大きかったようです。それでも実験に終わらない、音楽としての完成度をともなったアルバムです。
デビューアルバムもすごく好きですが、ここではまだ細野氏のオリエンタルなイメージが勝っているかな。それでも地方の一中学生には刺激が強すぎるくらいでしたが。
しばらく生の楽器(とくにラッパ系)を聞く気になれなかったし、今でもちょっとだけその傾向が残ってしまっています。
なんだろう、この感じ。音楽から汗や鍛錬を取り除いた「純粋なもの」を聞いてみたかったのかな?まあ、結局は汗も鍛錬も必要だし、そこにも音楽の良さがあることに後から気づくのですが…。
それにしても華のある音楽やアートだったなあ、YMOって。