デザイナー羊男の毎日

日常の「気づき」のおはなし。ごゆっくりどうぞ。

PDFの功罪 ~地方にいくほどデザインは装飾的になる?~

最近、アドビさんのテレビコマーシャルを見かけますね。

私としては生活の一部というか、デザイン制作でなくてはならないアプリケーションを提供してくれる会社なので「へえ、CMやるんだ」ってなもんですが、いつのまにか生活者にも広がっていくのかという感慨はありますね。自分の好きな地下アイドルがメジャーになっていくのを寂しがるような感じでしょうか?

PDFの功罪

PDFが一般的に使われるようになり、本当に便利になりましたよね。アドビで一番使われているアプリケーションじゃないでしょうか。

なんといっても、どなたでも簡単に高精細なイメージが確認できます。その便利さを功とするなら、罪は?

それはスケール感がなくなること。どういうことかって?それを説明します。

 

社員証のデザインをしました。

クライアントは、ある山陰地方のシステム会社様です。社員証ってあの首からぶら下げるカードみたいなやつなんですが…。身分証明にもなるし、建物に入る際のセキュリティ・キーの役割も果たします。あと、社内の食堂や売店での支払いもできるようですね。払いは給与天引きになるワケで、これまた便利になったものです。

で、デザインをするにあたり「PDFで送ってよ」となります。

入れる内容は、

・「社員証」の文字

・社名

・氏名

・写真

こんなところかな。裏面は事務的な注意書きですね。

 

PDFでデータを送ると…

PDFでデータを送ると、クライアントは画面でデザインを見ることになります。

だいたい、見やすいように拡大しますよね。ここが落とし穴で、実際はカードサイズ(85.6ミリ×54ミリ)なのでかなり小さいのですが、盛り盛りにデザインを敷き詰めたくなるらしいのです。余計な飾りを入れたり、たくさん色を使いたくなるんです。

「シンプルで機能的なほうが今風でかっこいいですよ」と申し上げても、なかなかわかっていただけない。言葉は見た目のインパクトにはかなわないので、営業には必ず「原寸で紙に出力して持って行って」と口を酸っぱくして言うのですが、面倒なのでしょうね。信じられないくらいに野暮ったい社員証の完成です。

デザイナーとしては、こういうモノをリリースすること自体、心外で残念です。また、クライアント会社の若い社員が「なにこれ。だっせー」と言っている姿が目に浮かび、いたたまれなくなります。

 

PDFはホント便利で私も恩恵にあずかっていますが、こういう困りごともあるってお話でした。