デザイナー羊男の毎日

日常の「気づき」のおはなし。ごゆっくりどうぞ。

書評「終わった人」

東大卒のエリート銀行マンが定年後に抜け殻のようになり、生きがいを求めてベンチャーの社長になるというようなストーリーです。これ以上はこれから読もうとしている方にとってネタばれになるのかな。

 

これは、今読んでおいてよかったかもしれません。

私は定年まであと数年ありますが、サラリーマン人生の今までの時間に比べたらたぶんあっという間に迎えることになるでしょう。はっきり言って読み始めたときはどこか他人事で、読んでいて実感が湧きませんでした。それは今が忙しかったり、ストレスを感じたりしているから。「会社に行ってイヤな思いをしなくていいなんて、けっこうなことじゃない」とかね。

まあ私の場合は、イヤとかツライとかよりも楽しいことが大きなウェイトを占めているのかもしれませんので。これは幸せなことなのか?と本書を読んで考えさせられました。

この本に出てくる主人公とは境遇が全然違うけれど、ちょっとしたシミュレーションにはなったと思います。

 

やっぱり仕事は楽しいのか

彼(主人公)は、暇な時間を持て余して本当に芯まで腐ってしまう体験をします。

私にとっては「デザイン」が仕事になるのですが、それが銀行業務だったとしてもやはり楽しいものなんだなとあらためて思いました。結局のところ「人に頼りにされる」ということが喜びなんですね。だから持て余した時間でフィットネスジムに行っても、カフェで新聞を読んでも、カルチャーセンターで古典を学んでも、何も満たされない。

ちょっとした頼まれ仕事で、スーツを着る機会があるだけで心が躍るという主人公の気持ちがだんだんわかってきました。

 

けっこうリアルで面白い

この主人公、若い女性に恋して振られたり、ひょんなことからベンチャー企業の社長になるものの倒産しちゃったりで空回りばかりですが、なんか「がんばれ」と応援したくなります。これは私の知らない知識でしたが、社長って自宅を抵当に入れるのですね。だから会社が倒産すると家を差し押さえられると。よく家を奥さん名義にする社長さんがみえますが「あ、そういうことなのね」と感じ入りました。

社長って大変なんだなあ。とちょっとだけ自分の会社の社長を思い出したり。

 

そんなお話なので、若くて前途洋々な方はあんまりおもしろくないかも。映画にもなりましたが、そちらはまあ機会があったら観てみようかな。