デザイナー羊男の毎日

日常の「気づき」のおはなし。ごゆっくりどうぞ。

伸びしろがないから楽になる

北欧フィンランドに伝わる「船乗りの人生」のお話

ある男が小舟をこぎながら一人で釣りをしていました。
だんだん釣りの楽しさを覚えて、そのうち大きな船で遠くまで行くようになります。
たくさんの漁師たちもいっしょに乗せて、遠くの魚をとってくるようになる。
それから何年も月日が経って、年老いたあとはまた小舟に戻って、ひとりで釣りを楽しむようになりました。

 

アパレルデザイナー、ミナぺルホネンの皆川明さんが何かのインタビューで仰っていた話のうろ覚えですが、短い話ですのでそんなに違っていないと思います。

思えば私もそんな「船乗りの人生」を歩んでいるような…。どんな仕事にも言えるのかわかりませんが、モノを作っている人には共通の感慨があるかもしれません。

 

伸びしろがないから楽になる

私も50代。仕事へのアプローチを変えなくてはと思う年代です。

まだ全然青くって、新しいことをやりたくてしょうがない気持ちがありますが、それでも社会的には後進に道を譲らなくてはならない場面も多くなりました。

企業に属している以上、いわゆる「伸びしろ」というものは自分だけが決めるものではありません。進んで「小舟」に戻る気持ちはさらさらありませんが、「伸びしろはもうないな」と判断を下すこと多し。組織的にもここから上にあがることはないしね。

 

なんだか落ち込んでいるように見えるかもしれませんが、実は逆です。今、仕事が楽しくて仕方ありません。若いときは可能性がたくさんあったが故に悩んでいたことありませんか?まあ、引き出しが少なかったことも悩みではありましたが、それ以上に「自分をどこまで伸ばせるか」に楽しさと同じくらいの怖さを感じていたと思うのです。

それが現在、自分なりのメソッドや引き出しもできて「やりたいことがそれなりにできる」ようになった。それも(いい意味で)高望みせずに効率よく結果が出せるようになったのです。

物は考えよう。リラックスした状態から「どれだけいい仕事ができるか」。変な言い方ですが、これからの自分の仕事をみるのが楽しみなのです。