もういよいよですね、2021年。どんな年でしたか?
クリスマスから年末まではいつもこんなことを考えて過ごします。
なんとなくオマケの6日間みたいな感じで、何かをやろうとは思えない。仕事も休みになりますしね。
どちらかと言うとあまり好きな期間ではないかなあ。ワーカホリックではありませんが、何かに追われているのはある意味ラクなのかもしれません。
来年は寅年ということもありますので、私の好きな「男はつらいよ」について書いたエッセイを読み返しました。
ヘタな人生論よりも「寅さん」のひと言
「男はつらいよ」の名言から、「人間にとって本当に大切なものってなんだろう」を論じた本。
映画のセリフを取り出して分析することの野暮は、著者も本書の中で書いています。それでも、じっくり噛みしめるにはなかなかの良書だと思います。
ご存知の通り主人公の車寅次郎、通称寅さんは物語の中でいわゆる社会模範的な人間ではありません。フーテンで気ままにその日その日を暮らす、でも心がまっすぐで義理人情に厚い。はたで見ているには面白いのですが、近親者にしてみたらけっこう厄介な人です。私たちは傍観者だからこそ面白く見られるのだと思います。
そして、この映画の「本当に言いたいこと」は寅さんではなく義理の弟ヒロシによって告げられることが多い。彼は町工場の印刷工。まさに私たち小市民の代表なのです。監督・脚本の山田洋二のメッセージはヒロシによって「兄さんは気楽でいいですよね」という具合に出てくるのです。そしてその中には、自由への憧れや社会問題への提議が垣間見られます。
6章からなる構成
第一章 心がまっすぐになる
第二章 自分を取り戻す
第三章 確かな絆に気づく
第四章 もっと深く人を愛せる
第五章 また明日から頑張れる
第六章 生きる勇気がわく
本日は5章の中から、一つ抜き出してみたいと思います。
寅
「例えば日暮れ時農家のあぜ道を一人で歩いていると考えてごらん。
庭先にリンドウの花がこぼれるばかりに咲き乱れている農家の茶の間、灯りがあかあかとついて、父親と母親がいて、子供たちがいてにぎやかに夕食を食べている。
これが…。これが本当の人間の生活というものじゃないかね、君」
おばちゃん
「ちょいと悪いけどね。親子で晩御飯食べてるだけのことで、なんでそんなに感心するんだい」
おいちゃん
「そうよ。どこでもやってるじゃねえか、そのくらいのことは」
寅
「ただ食べてるんじゃないんだよ。庭先にりんどうの花が咲き乱れていたの」
おばちゃん
「りんどうの花だったらうちにも咲いてるよ」
寅
「電気があかあかとともってよ」
おいちゃん
「夜になりゃ、電気はつけるだろ、どこでも」
寅
「ああ、わかってないな。これだから教養のない人はいやなんだよ、話し合えないという感じがするもんねえ。なア、博くん」
博
「(閉口しながら)え、ええ、そうですね…。つまり兄さんの言いたいことは、平凡な人間の営みの中にこそ幸せがある。とでもいうのかな」
この掛け合いがたまらなくいとおしいですね。とらやの面々と食卓の様子が浮かびます。やっぱりもう一度映画でもみたいですね。
では、良いお年をお迎えください。