デザイナー羊男の毎日

日常の「気づき」のおはなし。ごゆっくりどうぞ。

粘土の天才は…

これは、私の娘の幼稚園のころの話。今まで何度も同僚や友人に話してきた「すべらない話」です。自分もこの話が大好きで、人に話すたびに幸せな気分になれます。どうして今までブログに書かなったんだろう?

 

幼稚園の発表会とは

秋ごろになると幼稚園では、自分たちの作品やお遊戯を発表する会が催されます。

私の娘も幼稚園の先生をやっていたので、その準備の大変さは痛いほどわかります。お遊戯の衣装や部屋の飾りつけ、踊りの振り付けを考えたり、その他やることがてんこ盛りなんです。私も手伝いました。準備期間はマンションのリビングは作業場と化します。色紙や段ボール、カラフルなビニールシート、リボン、型紙、を大量に買い込み園児の人数分のアイテムと変身していきます。

寝る時間も割いて作業に当たるのでたいへんではあるのですが、私としてはなかなか体験できないことでもあるのでちょっと楽しんでいる節もありました。単純に子供のものってかわいいんですよ。「できた!」っていう達成感がはんぱない。

まあ、ある意味ブラックな職場環境とも言えますね…。その話はまた今度に。

 

娘の発表会で

話は飛んで、娘が幼稚園児だったころ。やはり発表会のお話です。

お遊戯や歌に力を入れている幼稚園で、市民ホールを貸し切りにしてやっていました。衣装はお母さま方のお手製だったと記憶しています。業者や布の問屋を活用しながらかなり完成度の高い衣装に、親も子供も「すごいね」と感嘆していました。

一方、作品の発表は幼稚園の教室です。子供用の机を合わせて、テーブルクロスを敷き、上に園児たちの作品が並べられています。娘の教室は粘土の作品でした。

 

並んでいる粘土作品のなかに…

どれもかわいい力作です。作品の前にはプレートでタイトルが表示されています。

男の子は、怪獣や自動車、女の子はおうちやお花、小動物なんかが多いかな。

どれも幼稚園児の作品なので、細かい造形は器用には作れませんが一生懸命さが伝わってきます。一つ一つ丁寧に見ていくと…。

そこに目を疑う作品がひとつ。「こ、これは…」

そこにあったのは、まさに買ってきて袋から粘土を出したそのままの直方体です。

タイトルを見てさらに驚きました。

「冷えピタ」

妻は笑いをこらえて震えていました。私も悪いと思いつつ笑ってしまいました。

その園児のお母さんも「もう、恥ずかしくて泣けてくるわよ」と笑っていました。

園児どうし友達でお母さんとも仲が良かったので、笑い話としてとてもなごんだ時間となりました。その作品は仲間内ではレジェンドとなりましたが。

 

現代アートかも

でも、よく考えるとなかなか面白いアプローチなんですよね。他のみんなは粘土で形を作ってタイトルを考えています。その若き芸術家はあるがままの形にタイトルを付けて作品にしてしまったと。

マルセル・デュシャンが便器に「泉」というタイトルを付けて美術館に展示した手法の上をいっているかもしれません。まあ、実際は時間がなくて苦し紛れの作品だったのかもしれませんが。それでもやはりすごい。だって理由はどうあれ作品はそこに残るのですから。