デザイナー羊男の毎日

日常の「気づき」のおはなし。ごゆっくりどうぞ。

デザインしてないというデザイン

いつか書きたいなと思っている記事があります。「ロゴ」に関するものなのですが、なかなかの大物なので取り組むのに躊躇しています。それなりに準備もいるでしょうし、ある程度考えをまとめなくては不可能です。まずはその前に軽くこのお話をしたいなと思います。もしかしたら「ロゴ」の話の伏線になるのかもしれません。

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アノニマスデザインとは

あまり耳慣れない言葉かもしれません。アノニマスは「匿名の」とか「無名の」といった意味です。当然ながらそこにはキャラクターもなければ企業ロゴもありません。

究極のアノニマスデザインは「おにぎり」でしょうか。確かに誰がデザインしたかわかりませんし、デザインの意図さえ感じない。もっともふさわしい形になるまで、どういう変遷があったのかはわかりませんが、この三角形は、簡単に作れて、持ちやすくて、食べやすい究極の形です。我が家では朝、毎日のようにアノニマスデザインが作られていると言えますね。

飛行機もそう。これが空を飛ぶために最適な形なのです。「今回は女性のイメージアップを狙ってかわいいハート形のデザインにしてみました」ということはありません。それでは空を飛べませんから。あ、機能を軸にしていることが大きな特徴ともいえますね。

「シンプル」とはまた違った概念を持つ「アノニマスデザイン」は、私の理想とするところでもあります。

こんな製品があります。

 

ちょっと面白い形をしていますが、これも機能性を突き詰めたものです。我が家にも昔からあって、使っているうちに手放せなくなるほどの使いやすさです。柳宗理は著名なプロダクトデザイナーですが、ここにはその名前さえ刻印されていません。

 

無印良品アノニマスデザインです。何万点というラインナップを有する無印ですが、どれも「機能がそこにある」というくらいの潔さ。よけいな意匠がないのでどんな環境にもなじむし、すべて無印で揃えたくなります。

 

顔が見えない製品へ

デザインが主張しないことの優位性は書いてきた通りです。最近では特に「ブランドレス」の動きが高まってきていると感じますし、でかでかとロゴの入った製品は敬遠されることでしょう。一方、あまりにシンプルを前面に出し過ぎるとそれも「作為的」なものになったり。

意外に難度の高い分野といえます。

これからは「作った人のアイデンティティ」よりも、ユーザー体験が製品のブランドになっていく時代になると思います。アップルとかもいい例ですね。

私はプロダクトデザイナーではありませんが、グラフィックの世界でも「アノニマスデザイン」は実現できると考えています。狙っている時点でもうアノニマスじゃないという矛盾はありつつ、使う人や見る人に作者の存在を感じさせないデザインができたらなあといつも思っています。