デザイナー羊男の毎日

日常の「気づき」のおはなし。ごゆっくりどうぞ。

いひおほせて何かある 〜松尾芭蕉への共感〜

あなたがすごく感銘を受けた言葉(名言)は何ですか?

私はその時その時で変わるのですが、まず頭に浮かぶのが「言いおおせて何かある」でしょうか。30代で知ってそれからずっと気持ちのなかにあります。

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松尾芭蕉が、弟子の去来を諭した言葉ということです。自分の句「下臥しにつかみ分けばや糸桜」を糸桜の様子を言い尽くした句であると評した去来に、「言いおおせて何かある」と芭蕉。で?それがどうした?というワケです。

そうなんです。自分の言いたいことをすべて言えたからって、句を詠んでくれた人に余韻や余情が伝わらなかったら意味がないのです。

ブログを書いていても思います。

私も「思ったこと・考えたことをすべて伝えよう」とつい文章が長くなることがあります。結果、読みにくいものになったり、面白みがないものになったり。

リズムよく読めて真意が伝わり印象が残るものが理想なんですが…。

私のブログは日記のような側面もあるので、備忘録として記しておきたいという気持ちもあります。でも、言い尽くした文章はあとで読み返さないことが多いですね。

あと、自分の書いた内容が他の人の記事にあるとガッカリしたりね。

「文章を書く」って本当に難しくて、やがていとおかしです。

デザインもそう。

今、ある損保会社のパンフレットを制作中です。

保険関係は特にそうなのですが、最初はすごく読みやすくてキャッチ―なデザインが、担当者の「あれも入れたい・これも入れたい」で最後は文字だらけになります。保険には約款(注釈や免責事項)が多いのである程度は仕方ないとは思います。

ただ「このサービスもあのサービスも謳いたい」というのは読み手の気持ちをあまり考えていないなと思うことも…。

売る側は全部把握しているので盛ってしまいがちですが、読み手はその情報量に食傷してしまいます。「あ、読みたくない」ってね。

このあたりは、なかなかわかってもらえず苦労するところです。以前に「このデザインでは情報量が多く文字も小さくて誰も読みませんよ」と申し上げたら「いいんだよ、誰も読まなくても。私たちが満足すれば」と真顔で言われたこともあったっけ。

そういう時は心を無にして「そのまま」作りますが、砂をかむような思いですね。

自分の説得力の足りなさを反省しつつ。

さいごに

「言いおおせて何かある」。現代の私に芭蕉先輩の気持ちが手に取るようにわかるとともに、すごく身近に感じます。名言として言ったわけではなくボヤキだったのかもしれない。でも、なんだか先人の体温や息吹が感じられて好きなことばなんです。

 

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