私は宣伝会議の「コピーライター養成講座」を受講していました。
あの糸井重里氏も先輩だそうです。そこで学んだというか刺激をもらったことは仕事に限らず私の人生の肥やしになったと思っています。
講座には、「アートディレクター」「コピーライター」「セールスプロモーション」があります(他にもたくさんありますが)。
私はデザイナーなのですが、なぜか「アートディレクター」以外を受講しています。
実はこの3つはかなり親和性が高くて、同じことを違う角度から見ているような感覚があります。わかりやすく言うと、絵で表現するか?言葉で表現するか?企画でアプローチするか?なんです。結局はどれも販売するための方策といえるし、密接に関わりあっています。
その中で、私の最も好きな「コピー」について個人的に「忘れられないもの」をいくつかご紹介していきましょう。
白いクラウン
講座で最初に聞かされる、いわゆる「名作コピー」というやつです。
クラウンはトヨタの最高峰といわれるクルマです。レクサスが出てくるまで、トヨタはピラミッド型の車種構成でクルマを販売していました。
カローラから始まって、コロナになり、最後はクラウンにたどり着くというストーリーがあったのです。日本が高度成長の頃はね。
だからクラウンに乗れるのは一握りの富裕層か、会社役員が乗る社用車だったのです。
で、トヨタはターゲットをもっと一般に向けたかった。ニューファミリーと言われる若い層にも「頑張れば乗れる」クルマにしたかったのです。
役員用の社用車といえば当時から「黒塗り」と相場は決まっていました。「黒塗り」が代名詞になっていたくらいで。
そこに「白いクラウン」というキャッチコピーを新聞一面にバーン!
純白クラウンの写真をドーン!
白いクルマは一般車というご時世ですので、浸透は早いです。一気にクラウンの販売台数は上がっていったと聞いています。
「庶民のあなたも手に入れましょう、クラウン」では浸透したかどうか?
いかにコピーが「状況」によるものかが顕著にわかる例ですね。
私はコピーは世につれてあるものだと思っているので、名作にはあまり興味がありません。でもこれはコピーを説明するのに適しているので一番に揚げました。
存在として美しいか、否か
これはスバルのレガシィのキャッチコピーです。クルマへの思い入れと自信がよく表れていますね。
注視すべきは「否か」の部分。普通キャッチコピーは「短いほどいい」といわれるほど端的に表現するものです。それなのに入れなくても意味が通る言葉を敢えて入れた。そこにスバルを作る人たちの「本当にこれでいいのか?」という自分との葛藤が見えてくるのです。
「美しい」とは何をもっていうのか?単純に見た目だけではなさそうです。安全性、乗り心地、環境性能…。様々な要素を包括しているようにしか見えません。
クルマを作る人、乗る人、ともに「スバリスト」と言うそうですが、そんなスバル哲学が色濃く現れたコピーだと思います。
これなら置ける
これ、何のコピーだかわかりますか?
パナソニックの食器洗い乾燥機なんですね。キャッチコピーってもっとキラキラした夢のあるものだと思ったら大間違い(そういうのももちろんあるけど)。
主婦にリサーチして、一番の悩みは「今のキッチンで食洗器を置きたいけどスペースが…」ということだったんです。性能よりもデザインよりも価格よりも、大事なのは「そこに置けるか」ということ。どれだけ消費者の気持ちに寄り添えるかが最重要なんですね。キャッチが主婦の言葉になっているのもミソです。
食べようと思えば、何だって食べられるんだから
これは味の素の企業CM(テレビ)です。
かなり古いですが覚えている方はみえますか?
全部書くと、「料理なんて簡単だよ。だって食おうと思えば何だって食えるんだから」。これを誰が言ったかがポイントなんですね。周富徳さんなんです。
あの周さんがスツールに座って、手にはハンバーガーを持って。
たぶん周さんにインタビューして出てきた内容なのですが、書いたのはコピーライターです。
「美味しいもの作らなきゃ」という主婦の切迫感をやわらげてくれる、いいCMです。
しつこいようですが、あの周富徳が言うから説得力があるのです。
これで「何が売れるの?」と思われる方もみえるかもしれませんが、味の素という企業のブランドを上げる効果は十分にあります。で、どちらにしようかな?と迷ったときに味の素の「ほんだし」を手に取るわけですね。
さいごに
ひとつひとつに熱が入ってしまい、あまり多く紹介できませんでした。
クラウン以外は、全然有名なものじゃないのですが、記憶にしっかり残っています。
私も、立派なコピーというより、身近な人の気持ちに寄り添えるようなコピーが書けたらいいなあと思います。
よかったら、あわせてお読みください。