デザイナー羊男の毎日

日常の「気づき」のおはなし。ごゆっくりどうぞ。

サラリーマンになったのなら上を目指したほうがいいよ という話

もし、サラリーマンのあなたが出世したいならいい方法があります。

今すぐ会社を辞めて、事業を立ち上げましょう。名刺に「社長」と印刷できますからね。 それは冗談としても…。

今は働き方も多様化して、出世したいなんて考える人は目に見えて減っているようです。趣味を充実させたり、家庭を大事にしたり、サイドビジネスで勝機を伺ったり。価値観はさまざまですので「何がいいか」なんてそれこそ人の数だけありますから。

それはもうコロナ以前のニューノーマルです。

 

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中間管理職でした。

私は看板にもあるようにデザイナーなのですが、ある期間(10年)管理職をやっていました。どの会社にもいる「室長」とか「課長」と呼ばれる職位です。

私の勤めているのは印刷会社なので、デザイナーは他の社員と違ってちょっと異色なんです。「なんか変わったヤツ」みたいな。ですからデザイン部隊といえど、上に立つのは営業出身だったり開発畑だったり事務系だったりしていました。

生え抜きの管理職は私が初めてで、今までは「デザイナーに管理なんてできない」とか、「絵を描く人だろ?かわいそうじゃないか」という認識でした。

 

私自身も管理なんて自信がないし、「もっとデザインをやっていたい」と思っていましたが、前任の課長さん(元営業)に泣きつかれて寿司とお酒を無理やり奢られ、いつのまにか承諾していました。思えば前任も、クセのあるデザイナーの人事考課に手を焼いていたのでしょう(デザインの評価は難しいのです。この話はまた今度)。

「給料が増えるよ」という甘い言葉に心が揺らいだのもまあ本当です。

実際には業績悪化で、昇進した次の月から減ったんですけどね。管理職一律で。

 

昇進試験として、課題論文と役員面接(雪が降っている日でした)がおこなわれ、無事課長となりました。

 

人・モノ・金が動かせる

課長になってみると、これがけっこう面白いことに気づきました。

まず、周りが自分に一目置いてくれるという(誠に単純な)快感です。私をこころよく思っていない人からは陰口をたたかれたりしましたが、ほとんどの人に敬意をもって接してもらえるのは気分の良いものです。

 

そして、自分の部署はもちろん他部署も(筋を通せば)かなり動かせるということ。

社外のパートナーとも積極的にコンタクトをとるようになりました。

今までが嘘のように、面白いくらいのスピードで案件やプロジェクトが進みます。

かなりの金額が自分の采配で動かせるのも管理職だから。権限としては上申書なしで300万円まででした。

 

なにかをやろうとすれば、「人・モノ・金」は不可欠です。私は決して野心家ではありませんので、そのほとんどを今までやりたくても出来なかったデザインの実現に使いました。

 

もし、潤沢に才能があるのにやりたいことができないという方がいたら、管理職になってみることをお勧めしたい。作業時間は圧倒的に減りますが、確実にやりたいことはできます。やりかたが変わるだけです。

 

ストレスもあります

面倒くさいことはたくさんあります。予算策定や収支の会計、勤怠管理、クレーム処理、報告資料作成などなど。でもこれは管理職になってわかったことですが、管理系の資料はある程度の規模の会社ならフォーマットが決まっていて、数字を打ち込むだけであとは経理課や経営企画課がやってくれます。予算も上司が見てくれるので、大きな間違いはまずしません。

一番たいへんなのは、人事考課ですね。考課の時期は悩みすぎて吐き気がするくらいですから。人の評価をこの私がするなんて…と同じことを何度も考えてしまいます。

 

管理職の仕事は「近い将来の絵を描くこと」

何年かして、「管理職とは、絵を描くことと見つけたり」という結論に至りました。

結局のところ、予算も業務計画も人事考課(教育)もすべてが「部署の将来像をどうするか」につながります。これを私は何十回と書き直してきました。絵というのは比喩的なことですが、私の場合は本当に絵にしたこともあります。要するに会社側に伝わればいいのです。

で、会社としては羊課長の想いはともかく、「それは儲かるのかい?」が最大の関心事でした。まあ、当たり前ですね。

 

それでも上を目指すべき

私は訳あって、管理職を降りました。役職定年を前に。

部長にもなれずにえらそうなことは申せません。

それでも、若い人たちに言いたいのです。

サラリーマンになったのなら上を目指すべきだと。

フリーでやっている方は本当に大変だと思いますが自由があります。その一方で組織の中でやる面倒くささと、組織ならではの面白さは確実にあります。それを余すところなく味わえるのは、管理職じゃないかなと思うのです。