みなさんはご覧になったでしょうか。パラリンピック閉会式。
どうなるかと思ったら、けっこうよかったです。オリンピックの開会式、閉会式と違って練習時間があったのかな。いやそれだけじゃなく、ちゃんとコンセプトが一貫していて気持ちよかったのです。
国内外で活躍するクリエーターの小橋賢児氏の手腕によるもので、コンセプトは「Harmonious Cacophony(ハーモニアス カコフォニー)」。 それぞれの違いを認め個性を輝かせることで“不協和音を調和させていく”。
キーワードがしっかりしているので、すべての要素(パフォーマンス、舞台演出、装置、美術、音楽など)が一体となって素直に美しいと思えました。
ユニバーサルデザイン
会場設計に関して感心したのは、オリンピックと同じフォーマットを使用していたことです。「誰もが使えるフォーマット」を最初から作ることは、まさにユニバーサルデザインの考え方。障がいのある方に使いやすいものは、健常者にも使いやすいのですね。予算面ではけっこう大きいと思われるこの施策。地味ですが意義深いです。
最後に櫻井翔くんがここに言及していたのも印象的でした。やるね、翔君。
私もユニバーサルデザインを手掛ける一人のデザイナーとして、責任をもってやっていこうと襟を正しました。
多様性について
この閉会式は、単に「障がいのある方のスポーツ」に留まらないものでした。
人の多様性について考える機会を与えてくれる、深遠なる閉会式だったと。
パフォーマーも健常者を交えて一体感を醸成しており、ジェンダーの問題も含んだダイバーシティがテーマになっていました。
障がいのある方が地球の全人口の15%という数字がまず驚きで、「あまり表に出てこない」社会の図式が浮かんできます。
この会場にはあきらかにもっと多いパーセンテージの方が見えるわけです。閉会式や競技をまとめて観ることで、へんな言い方ですが「見慣れた」ような気がします。
「慣れる」というのは大事なことで、他を受け入れる最初の一歩ではないかと。
シンパシーとエンパシー
シンパシーは同情や共感、エンパシーは自分と違う価値観や理念を持っている人が何を考えるのか「想像する力」のこと。
今までこの二つの違いが今一つよくわからなかったのですが、この閉会式を見てなんとなく腑に落ちた感じです。感情的なところ(可哀そうとか)に留まっていては何も変わりませんが、自分とは違う他者が何を見て、何を考えているかイメージすると世界は変わっていくのではと思います。
さいごに
今回、がらにもなく真面目に熱く語ってしまいました。
やはり、内容をともなった「いいもの」を見ると触発されるものですね。
私はデザインという限られた範囲でしか、なにかのお役に立つことができません。
でも、けっこうPower of Design (デザインのチカラ)を信じているのです。
よかったら、あわせてどうぞ。