デザイナー羊男の毎日

日常の「気づき」のおはなし。ごゆっくりどうぞ。

味覚についての2つのおはなし

コロナのせいでもないのですが、最近味覚について面白い話を別々に2つ聞きました。それほど珍しい話じゃないかもしれませんが、同時期に2つというのが「おっ」って感じで、ここに書くことにしました。

 

味覚は退化している?

 年齢を重ねるにつれて、味覚は磨かれていくものだと思っていました。

ほら、漫画「美味しんぼ」で海原雄山が「この青二才が!寿司の味がわかるには十年早いわ」などと言っていたり、飲食店や食品メーカーの年功序列を見ても、そう思ってしまいがちです。「やっぱりここはベテランの〇〇部長のご意見を」なんて、よくある話じゃないですか。

 

私自身も、昔食べられなかったフキが食べられるようになったり、ピーマンやニンジンがむしろ大好きになったりという味覚の変化を「進化」や「円熟」ととらえていました。苦みをうまみと解釈できるようになったと思ったのです。

 

しかし、結論を言ってしまえば、味覚は退化していくのだそうです。

味覚が衰える原因としては、年を取るにつれて、味蕾(みらい)の数が減少する、という説が有力です。

味蕾の数については、高齢者の味蕾は、乳幼児の30~50%まで減少するそうです。
味覚を感知する細胞は半分にまで減ってしまうんですね。

 

だから、小さい頃「苦い」と思っていたピーマンが苦くなくなり、「おいしい」と感じられるようになったんだというのです。

逆に、好き嫌いの多いお子さまは味覚が敏感なのでしょうね。

 

なるほど。と膝を叩きつつちょっとショックでしたね。何にせよ、「退化」とか「衰える」と言われるのはあまりいい気分じゃありませんから。

 

野菜の苦みはなぜあるの?

そして2つ目のお話です。

野菜(植物)は、動物に食べられないように身を守るために苦いとか酸っぱくなるそうです(そう変化してきたものが生き残ってきた)。中身よりも皮の方が固くて苦いのも納得がいきます。

でも、食べられないと種を広げることができません。できれば効率よく種を遠くに飛ばしたい。そこで出てくるのが「鳥」です。鳥の味覚は苦みを感じないので、一定量を鳥に食べられることで植物はその繁殖エリアを広げてきたと言えます。

この話、すごく面白くないですか?

まず、「植物は動かないもの」と思い込んでいましたが、自分は動かずに周りを使って動いているという感覚が新鮮です。

そして動植物の生態系と「味」というものがこんなに密接に関係しているなんて。

 

この2つの話について

この2つの話は別々に聞いたものですが、なんだか偶然とは思えませんでした。

何か関連性が見出せそうです。

私は50過ぎのオヤジですが、この文脈で言うと「鳥」の役割を担うのでしょうか。

ピーマンのうまさをオヤジが他の土地に広めていき、ちびっこは成長するまで勉強や運動にいそしんでくださいってことかな。

そう思うと、ピーマンすごいな。恐るべし、ピーマン。

 

そして味覚について思うこと

上記に書いたような側面もありつつ、私たち人間は「味」を娯楽ととらえているところが確実にあります。コンビニで買う「アイス」なんて、本来は食べなくていい食べ物ですしね。でもないと困るんです。自分へのご褒美として。

シェフの間では「味」はひとつの「道」とも言える崇高なものであったりしますし、また、おふくろの味というように愛情の形という言い方もできますね。

コロナで味覚が戻らないという方は本当にお気の毒に思います。そんな意味でも「憎きコロナ」です。はやく正常な日々になるよう心から願います。